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曾興平
(国立台湾美術館 西洋画展品評議委員、全国美術展準備委員)
山海の意志に向けられた「癡情」の観照
執筆:王穆提(WANG MUTI)
曾興平教授(1945年生まれ)の芸術人生は、台湾東岸の自然景観に対する深い愛情に満ちた記録史である。出品作 《眼前波景癡情看》 の芸術的到達点は、「物性」 と 「心境」 とを完璧に融合させた点にある。
1. 墨彩交融の錬金術
美術の専門用語で言えば、曾興平の技法は 「墨彩の質地の拡張」 と呼ぶことができる。彼は伝統水墨の 「骨格」 と、西洋水彩の 「肉身」 を巧みに活用している。
- 礁石の構築: 彼は乾筆(Dry Brush)と力強い濃墨を用いて、紙面上に花崗岩のように堅固な幾何学的構造を築き上げている。この技法は単なる写実ではなく、「恒久性」 をめぐる物質的宣言でもある。
- 波しぶきの動的肌理: 海浪と岩石の境界において、彼は特殊な 「漬染法」 を用い、海泡の飛散する偶然性を表現している。この偶発的に生じる美学は、岩石の必然性と強い視覚的緊張関係を形づくっている。
2. 「癡情」を現象学的還元として捉える
「癡情看」 は、単なる感情の表露ではなく、一つの現象学的実践でもある。芸術家は太平洋を長期にわたって観察する過程で、自己を対象の中へと溶け込ませていく。この 「物我合一」 の状態によって、彼の海はもはや客観的な風景ではなく、主体的意志を備えた生命体となる。
海から遠く離れた都市の中心である東京において、曾興平の作品は、南太平洋から吹いてきた生命の風のように、都市生活者の閉ざされていた原初的感覚を呼び覚ますのである。


